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英語長文の勉強法


(2022.12.20 更新)

「英語長文の勉強法」を掲載しました。出題される英語が長文化して総語数が増え,語彙のレベルも上がった GMARCH の英語で合格ラインに達するのは容易なことではありません。まして最難関国公私立大学ともなれば,そのハードルの高さは誰もが実感しているはずです。よほどしっかりした手順で,しかも効率良く勉強していかないと,つまり正しい勉強法を見につけていないと,望む結果は得られません。そこで新たなコンテンツとして,英語長文の勉強法「英語長文の読み方と解き方」をアップロードしました。

阿佐谷英語塾は,現在150題以上の英語長文問題(大学入試過去問)を,解答・解説・全訳付きで掲載しています。本文の語数が300語未満のものは一題だけで,他はかなり短めの問題でも400語前後あります。700-800語や1000-1200語はむしろ標準的な長さであり,1500語を超える文字通りの超長文も数題以上掲載しています。あくまでも英文読解の基礎が出来ている難関・最難関大学受験生を対象としているため,分類は「Advanced」「Advanced or Super Advanced」「Super Advanced」の3レベルです。「Basic」(あるいは「Standard」) に分類される問題は掲載していないことをお断りしておきます。 

英語長文の読み方と問題のき方

[1] 英語長文を速く正確に読む方法

1-3 単語と文法と構文の重要性
4-6 スラッシュ・リーディングについて
7-10 音読について

1 外国語である英語の文章を速く正確に読むためには,一定レベルの文法・構文の知識(読解文法)が不可欠です。背景知識の有無も重要です。そして最初にして最後の決め手は単語力でしょう。パラグラフ・リーディングをはじめ,スキミングだリーズニングだと,様々な技法が喧伝されてきました。設問を解く際にこうしたテクニックが必要なケースがあることは否定しませんが,さすがに今どき,各パラグラフの最初と最後のセンテンスだけを読んでいく「パラリー」なるテクニックが通用すると思っている人はいないでしょう。とはいえ,頭の中で日本語に置き換えることなく,段落を手掛かりに英文の内容(筆者の主張)を追っていくのは容易なことではありません。そこに至る前提として以下のプロセスが必要です。

2 英語長文に取り組む前提として,①単語と熟語を記憶する,②文法を理解・記憶する,③構文を理解・記憶する,この三つのプロセスが必要です。実際にはこの三つは切り離されたプロセスではなく,同時に進行してくものです。ただし数行の英文を精読する,いわゆる英文解釈であっても,英文全体の内容(主張)を把握することが大切です。いっぽう英語長文読解においてもこの三つプロセスが繰り返されることに変わりはありません。長文読解では,限られた時間で筆者の主張の展開を追うために速読が求められますが,だからといって精読が不要になるわけではありません。

3 ①の単語については「英単語の覚え方」を参考にしてください。②の文法に関しては「重要英語文法解説」をご覧ください。③の構文は,項目別の文法とは差別化を図り,改訂版の「重要英語構文 大学受験」で体系的に取り上げています。改定に伴い,英語の各例文に日本語訳と詳細な解説を付したのでご覧ください。

4 英文を「速く」「正確に」読むために,返り読みをせず,英語を英語の語順のまま日本語を介在させずに読む速読速解が必要になりますが,その最も効果的な方法がスラッシュ・リーディングであり,音読であるとされています。スラッシュ・リーディングには根強いファンがいますが,スラッシュの入れ方については人によって言うことが大きく異なります。またスラッシュ・リーディングは依存症になります。試験に限らず,英文を見たら新聞・雑誌・書籍を問わず片端からスラッシュを引かないと英語が読めなくなります。あるいは読むスピードが著しく遅くなります。ところが実際には,頻繁にスラシュを入れる手間暇だけで長文を読むスピードが遅くなり,速読速解の妨げになります。一定レベル以上の読解力が身につくと,そのことに気がつきます。

5 センテンスが長い場合に適宜スラッシュを入れていくことを一概に否定しませんが,意味の固まりを把握できてはじめてスラッシュを入れられるわけですから,間違えて入れたスラッシュに縛られて,文構造も意味内容も掴めなくなるのは本末転倒です。スラッシュの必要があるとすれば,英語の書き言葉はカンマの使い方が恣意的で,書き手によって著しく異なるからです。つまり本来あるべきなのに存在しないカンマの代わりにスラッシュを入れていくわけです。その場合でも,英文をなるべく大きな意味の固まりで捉える練習をしましょう。要するに,スラッシュ・リーディングが不要となることが,高度な読解力が身についた証になるのです。まだそのレベルに達していない人も,挿入語句節や修飾語句節をカッコで括っていくほうが,英文の構造や意味内容を掴みやすと思います。

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6 同時通訳方式と称して,数語ずつ,意味の固まりごとに前から日本語に訳していくことをスラッシュ・リーディングと呼ぶ人がいます。しかしこの方法を「英語の速読速解」と言うのは無理があります。とはいえ,構文が複雑で内容も難解な英文を,いっさい日本語を介さずに英語の語順のまま正確に読むことが出来るのは,教養ある英語ネイティブに近い高度なバイリンガルくらいでしょう。だから短期間に読解力を飛躍的に伸ばすには,2 で挙げた三つのプロセスを,多様な英文を読みながら行っていく必要があるのです。

7 次は音読についてです。驚くことに,英語は黙読よりも音読のほうが速く読めると思っている人がいます。日本語であれ外国語であれ,黙読のほうがはるかに速いことは言うまでもありません,音読を重ねると黙読のスピードも増すのは事実ですが,音読そのものは,正確に読めるレベルに達した英文を確実に身につけるための復習の方法です。以下に阿佐谷英語塾の英語コンテンツ「リスニング&音読用英文」の冒頭に記載した注意書きを掲載します。

・英文の単語・文法・構文・内容を理解して,正確に読める状態にします。
・この過程をスキップすると誤聴と誤読の集積になります。 
・その後で YouTubeなどの動画で音声を再生します。
・読めない英語を聴いても音読しても,内容を聞き取る力も読む力も身につきません。
・音が聞き取れることと内容が聞き取れることはイコールではありません。  
・初めは英文を見ながら音声を聞きます。慣れてくると音声だけで聞き取れるようになります。
・正確に聞き取れる英語を,正確に発声(音読)することで,書く力を含む総合的な英語力が身につきます。
 *現在一部の動画が著作権の問題等で視聴できなくなっています。

8 「リスニング&音読用英文」は,元がスピーチ(演説)等の音声だったものを文字起こしして音読にも使えるようにしたものです。しかしリスニング用の音源としても,海外帰国生や留学経験者,あるいは一部の大学を受験するリスニングの得意な人以外には,あまり取り組みやすくないと思います。私が昨年来考えていたのは,元が書き言葉である「英語長文問題」を音声化することです。つまり speech to text ではなく text to speech です。一度に読み上げる text の語数を調整しながら,最終的には1500語の長文でも音声化することが可能です。設問付きの英文を白文に戻して音声化するわけです。これが可能になったのは,声優の声を使ったAIによる音声合成が飛躍的に進歩したからです。ソフトにもよりますが,生の人間が吹き込んだCDと遜色がないどころか,男女数人の声優の中から選べて,スピードも声のトーンも自由に変えられるので,むしろ優れていると言えるかもしれません。

9 ただし,以前よりはパソコンの比率が増えたとはいえ,今でも横幅の狭い iPhone の使用者が大多数ですから,スマホの画面をスクロールしながら文字を追っていくのは,楽な作業ではありません。もっとも,普段スマホだけを使っている人はそれほど苦にならないかもしれません。text-to-speech を実現するネックは,使い勝手の良い音声再生の仕組みをホームページに埋め込むことと,穏当な価格で高性能な音声読み上げソフトを購入することです。この問題を完全にクリアーできた訳ではありませんが,新たなコンテンツとして「リスニング&音読用英文 英語長文」 をアップロードしました。音声再生のスピードを最適化するために,書き言葉であるスクリプトにはないカンマ等を補って,順次,聞き取り易くしていくつもりです。

10 実は音読についても様々な考えがあります。一つのパッセージを三度は音読することを薦めるのは穏当なアドバイスです。実際には30-40回はおろか60-70回をマストとする意見さえあります。これは完璧に暗唱することを薦めていることになります。インプットする英文の数と量が少ないうちはそれほど負担にはなりませんが,ある程度大きな声で行う音読は相当な時間とエネルギーを費やすだけでなく,黙読と異なり,何時でも何処でもできる作業ではありません。また音読が自己目的化する恐れもあります。あくまでも聴解力と読解力をつけるための音読ですから,費やす時間や労力と効果とのバランスを忘れないことです。

テキスト

[2] 英語長文問題の解き方 

1 英語長文問題に取り組む際にまずやるべきことが二つあります。一つはごく常識的なことであり,ほとんどの人が実行していると思いますが,本文を読み始める前に設問に目を通すことです。下線部や空所の前後を読むだけで答えられる設問と,例えば「内容真偽」のように本文全体を正確に読まないと答えられない設問があるからです。もう一つは各段落に番号をふっていくことです。慶應経済,慶應SFC,2021年までの早稲田法学部のように,出題されたときからパラグラフに番号が付いている大学・学部もあります。パラグラフに番号をふる理由は,段落を手掛かりに論旨の展開を追っていくためです。

2 英語長文の論旨の展開を追うためには,文章の主題と,その主題に対する筆者の基本的な立場を早めに掴むことが大切です。これを掴んだ上で接続語と代名詞に注意して文脈を追っていくことが必要です。等位接続詞(and, but, or, for, so)と従位接続詞(when, if, because, though, since, as 等)と接続語(however, nevertheless, therefore, moreover 等の副詞)の区別がつかない人が少なからずいます。この違いが分らなければ,難関大学レベルの英語を正確に読むことは出来ません。一方,精読の名の下に構文を偏重する人のほとんどに共通するのが,代名詞を軽視していることです。they は主語,them は目的語くらいは誰でも分かりますが,それが何を受けているかによって,英文の内容は大きく異なるにもかかわらず,その意識が希薄です。

3 英文の論旨(論理)の展開はけっしてワンパターンではありません。第一段落の最初のセンテンスで主題と同時に結論までが提示されている場合もあれば,第一段落,ときには第二段落の最後のセンテスで主題が明らかになる場合もあります。段落が変わって論旨が展開していくときも,内容的には段落改行は必ずしも必要ない程度のこともあれば,段落と共に主題が大きく転換していくこともあります。入試に出題される英文も名文ばかりとは言えず,駄文・悪文も少なくありません。ときにはパッセージの途中で主題が変化し,前半の内容は刺身のツマにさえならない場合もあります。したがって,英語の文章構成には基本的なひとつのパターンがあり,それを理解していさえすれば,あらゆる英文の内容が追えるかのような解説はむしろ弊害となります。

4 実際には,日本語の文章と同様,論旨の展開が論理的でない英文のほうがむしろ多数派と言えるでしょう。論理の飛躍・矛盾に限らず,冗長,重複,逸脱,事実に反する記述も珍しくありません。おそらく,具体的な例を挙げなければ,何を言っているのか分らないという人が多いと思われます。一つだけ例をあげます。

Human behavior is often caused or influenced by meanings: honor, pride, justice, promises, duties, ambitions, goals, and so forth, which are essentially absent in other animals' behaviors.

meaning という言葉の定義によりますが,例示された7つの中には,一般的には人間以外の動物には存在しないと解釈されるものもあるでしょう。しかし少なくとも人間と共に生活している一部の動物には,言語で表現することが出来ないとはいえ,こうしたものが存在すると解釈することも可能です。長年ペットとして犬や猫を飼ってきた人からすれば,むしろ自明のことかもしれません。(次回で完結します)

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