阿佐谷英語塾塾長のメッセージ

東大人気と東大生の学力低下


(12.3.2011)

日本国内と世界を取り巻く状況は危機的と言っても過言ではないでしょう。様々な既存の枠組みが機能しなくなり,さりながら,代わり得る新たな枠組みが模索のレベルにも達していないのが現状です。国民が小泉劇場なるものに踊らされていた頃よりもはるかに深刻な状況にあると言うべきでしょう。各界における人材の不足が大きな要因であることを痛感せざるをえません。したがって「東大人気」を論じているような悠長な場合ではないかもしれませんが,真のエリートの不在をその背景に読み取るのは容易なことです。ここは英語塾のサイトですから,社会的な問題への言及は極力控えますが,阿佐谷英語塾は開設当初から小論文の指導を行なってきた関係上,横道に逸れているわけではありません。近年,多くの人が実感しながら,その理由が必ずしも明らかにされてこなかった著しい東大人気の高まりと,本来なら明らかに矛盾するはずの東大生の学力低下の実態が以下のデータに如実に表れています。今回はデータの借用と簡単なコメントに止め,また講を改めて論じる予定です。

(2010年 東京大学合格者 センター試験平均点 河合塾作成のグラフより)
文科一類 英188 数184 国161 社183 理89 単純総合805点
文科二類 英187 数179 国156 社180 理88 単純総合790点
文科三類 英187 数171 国159 社182 理88 単純総合787点
理科一類 英184 数192 国152 理184 社86 単純総合798点
理科二類 英185 数187 国153 理183 社86 単純総合794点
理科三類 英187 数198 国158 理191 社89 単純総合823点

(大学入試センター発表 2010年全国平均点等一覧より)
英語118.14+リスニング29.39
数I・数A48.96 数II・数B57.12
国語107.62
世界史B59.62 日本史B61.51 地理B65.11 現代社会58.76 倫理68.66 政治・経済59.16
生物69.70 化学53.79 物理54.01 地学 66.76

前掲の東大合格者のデータは,全国平均点と比べれば高いのは当然ですが,合格最低点ではなく合格者平均点だとなると,東大が日本一の難関大学だとはにわかには信じられなくなります。確かに科目数の多さは私大はもちろん他の国立大学をも圧しているのは事実ですが,それを割り引いたとしても,英語の平均点が190 を越えている学部が一つもないのはまだしも,国語がかろうじて160 を越えているのは文一だけということになります(これが最も深刻な事実です)。肝心の二次試験の易化と相まって,一部の例外を除くと,東大受験生の学力低下は紛れもない事実のようです。
だから,多科目の勉強の負担に耐えられる人,耐えたい人はみな,頑張って東大を狙えばよいのです。そして現にそうなっているのです。もう今の私に現国まで教える余裕はありませんが,二次の英語で目一杯稼いで弱点科目の穴埋めをするお手伝いはできるでしょう。

ただし,大学当局が意図的(?)にこうした状況をつくり出して,東大人気を高めているとしたら,そして高校や塾・予備校,マスコミがそれに乗っかって格好のビジネスにしているとしたら,手放しで喜んでばかりはいられません。今の日本で東京大学が果たすべき役割は,女子学生の比率を高めることを主要戦略の一つに据えるなどといったことではないはずです。それでは,優れた研究者が本来持つべき歴史意識にも状況感覚にも危機意識にも欠ける,単なる一企業の発想にすぎません。長期的展望も結構ですが,時代は走り出すと容易に後戻りが効かないものです。今こそ東大教授陣の時代への積極的なコミットが求められているはずです。さすがにいまさら東電擁護ないでしょうから。東大生の潜在能力は相対的にはまだまだ相当に高いと思います。それを顕在化させるのが,本物の大学と研究者の責務ではないしょうか。マスコミで楽観論を振りまいている某教授,いい加減に目を覚ましたらどうですか。「力」シリーズの某先生,あなたの思想と研究者としての良心がいま問われているのですよ。

英語専門塾 大学受験 阿佐谷英語塾